骨粗鬆症

<図1>腰椎椎体

 骨粗鬆症の程度と腰痛の程度は比例しているとは言えませんが、 無関係ではありません。

骨粗鬆症と腰痛の関係

 骨粗鬆症と腰痛の関係には、次の3通りがあると考えられます。

1)腰椎の圧迫骨折による直接的な疼痛。これは、支持性(体を支える
  能力)の欠如と不安定性による圧迫骨折周囲の軟部組織(靭帯や
  筋肉など)の痛みが考えられます。また、これに伴って神経の圧迫を
  きたすことも考えられます。
2)骨粗鬆症で背中が丸くなると、背筋・殿部の筋肉に負担がかかって
  腰痛を生じる。
3)腰痛のため動かないと、さらに骨粗鬆症が進む。


骨塩量のグラフ

 <図2>女性の骨塩量(橈骨での測定)

骨粗鬆症の診断

 骨の強さというのは、ちょっと前まで骨密度あるいは骨塩量(骨のカルシウムの量) に比例すると言われていましたが、最近では

  骨の強さ=骨塩量+骨質

と言われています。<図1>では下の骨は上に比べて黒っぽい(骨塩が少ない)だけでなく、 骨の中にある微細構造(コラーゲンの梁)も粗くなっており、骨質が劣化していると言えます。


骨塩量は次のような方法で測られています。

(1) DXAと言われる特殊なX線装置で@腰椎 A大腿骨近位 B橈骨遠位 などの部位の骨塩量を測る。 @、Aが推奨。Bの年齢による変化を表したのが<図2>の曲線(真ん中が平均)。
(2) 超音波で踵の骨を測る。
(3) 手のレントゲンを、基準となるアルミの板と一緒に測って比べる。

 そして、20〜44歳の骨塩の平均(Young Adult Mean)を100%とし、 その何%かを表す数値をYAMと言います。 2000年の厚労省の診断基準ではYAMが70%未満を骨粗鬆症としています。 またこの診断基準では、YAMが70%以上でも脆弱性骨折があれば骨粗鬆症としています。 脆弱性骨折とは、例えば尻餅をついて起こる腰椎圧迫骨折などのように軽微な力で起こる骨折のことです。

 では、骨質を測定するにはどうするか? これは手軽な方法はありません。 一部で3次元CTを用いた評価というのが研究されていますが、一般的ではありません。

骨折のリスクを評価するのに有用なFRAXというツールがあります。

 

 ★あなたが10年以内に脆弱骨折を起こす可能性は何パーセント?
                    FRAX (WHO骨折リスク評価ツール)




骨代謝マーカーについて

 上の診断にしたがって骨粗鬆症の治療を行うわけですが、 治療方針を決定する上でもうひとつ大切なのが骨代謝マーカーです。 骨代謝マーカーが高いということは、骨を壊す細胞、すなわち破骨細胞の働きが盛んになっている状態です。 骨代謝マーカーの状態によって次のような場合があります。

                        

骨代謝マーカー

 状態 

どうなるか

 ↑ 
子供
骨形成のほうが上まわるので骨は成長する。
 ↑ 
骨粗鬆症
骨形成が追いつかないので骨粗鬆症になる。
 ↑ 
骨折 
正常であれば骨形成も亢進し骨癒合がおこる。
 ↑↑ 
癌の骨転移 
骨が盛んに壊れている状態。
 → 
成人
骨は安定している。
 ↓↓ 
骨代謝が低下
骨は堅いがもろくなる。骨折が治りにくい。

骨粗鬆症の治療

 骨粗鬆症を予防する必要条件は
 栄養(カルシウム、コラーゲン、ビタミンDなど)+ 運動 ですが、 高齢になるとこれだけでは予防できません。カルシウムさえ沢山取っていれば大丈夫と思ったら大間違いです。 特に、女性の場合は閉経後に女性ホルモンの減少により骨粗鬆症が進みます。また、遺伝的な要因も大きいのです。
 骨粗鬆症の治療には、下の表に挙げるような様々な薬剤を使って治療を行います。

                             

種類

働き

薬剤(製品名)

活性型
 ビタミンD3
腸管からカルシウムを吸収する。
骨へのカルシウム取り込みを促す。
骨折予防効果の高い新しいVD3が出ます。
アルファカルシドール(ワンアルファ)
カルシトリオール(ロカルトロール)
ビタミンK
骨をつくる骨芽細胞の働きを助ける。
メナテトレノン(グラケー)
ビスフォスフォネート
破骨細胞の働きを抑える
アレンドロネート(ボナロン、フォサマック)
リセドロネート(ベネット、アクトネル)
ミノドロン酸(ボノテオ、リカルボン)
エストロゲン
骨吸収を抑えことで骨粗鬆症を予防する。ただし、乳癌のリスクが増えるなど注意すべき点がある。
結合型エストロゲン(プレマリン)
SERM
骨にはエストロゲンと同様に働くが、他の部位には働かず副作用が少ない。
ラロキシフェン塩酸塩(エビスタ)
バゼドキシフェン酢酸塩(ビビアント)
カルシトニン
血清カカルシウム濃度を下げ、骨吸収を抑制する。 神経に働いて疼痛を和らげる効果がある。
エルカトニン(エルシトニン)
PTH
骨形成に働くホルモン
テリパラチド(フォルテオ)

 薬だけ並べても分かり難いので、どのように薬を選ぶかを示します。これらの治療にあたって多くの場合、 カルシウム(必要に応じてビタミンD3も)を基礎治療薬として補う必要があります。 それは、いくら骨の代謝を改善しても骨の材料であるカルシウムが不足していては効果が少ないからです。



   <症例1> 58歳女性。45歳時に閉経。骨塩量は68%YAM、骨代謝マーカーが軽度↑。
         ⇒ SERM (理由:閉経後の骨粗鬆症と考えられるので。)

   <症例2> 65歳男性。関節リウマチでステロイド服用中。骨塩量は72%YAM。
         ⇒ ビスフォスフォネート(理由:ステロイドによる骨粗鬆症進行の危険性大。)

   <症例3> 73歳女性。骨塩量63%。骨代謝マーカー中等度↑。変形性腰椎症があり腰痛が強い。
         ⇒ ビスフォスフォネート + エルシトニン20S 週1回注射
          (理由:骨代謝マーカー↑↑ だけでなく、疼痛があるためエルシトニンを併用。)

   <症例4> 78歳女性。骨塩量52%。椅子から落ちて第一腰椎の圧迫骨折をきたした。
         ⇒ フォルテオの注射 (毎日皮下に注射)
          (理由:骨塩が非常に低く、さらに脊椎骨折を起こすリスクが高いため。



 上記はほんの一部の例です。実際には、その人その人によって細かく調整する必要があります。 なお、骨粗鬆症治療の目的は何か? 骨密度を増やすこと? No! それは骨折を予防することです。 もちろん最終目標は健康寿命を延ばすこと、すなわち元気で長生きすることなのです。



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